2025年05月06日更新

 Mathematica で, 7次方程式(septic equation)の厳密解を求める

[1] Mathematica13.3 で 5次以下の方程式のガロア群や,5次方程式の解を求めるプログラムを書いたのは 2025年の冬でした.(Mathematicaで5次方程式の厳密解を求める)そのあと7次方程式に取り掛かりましたが,5次方程式に比べると数段難しかったです.体感では3倍ほどの難しさでしょうか?

最初の問題は 「私のプログラムでは7次方程式のガロア群が求まらなかった点」です.次の問題は「Web上では,参考文献が英文を含めても非常に少ない事(私はWikiPediaのみ参考にしました)」で,最後の問題は「7次方程式の本質的な難しさ」です.

[2]結局,7次方程式のガロア群や原始元vの最小多項式,解のvによる表現については SageMath を使って求めました.同時に,2日かけて f(x)=x7+ax5+bx4+cx3+dx2+ex+f (a,b,c,d,e,fは絶対値が10以下の整数)の可解なガロア群を全て求めたのですが,そのときガロア群は F42とD7(位数はそれぞれ42と14)しか見つかりませんでした.英語版のWikiPedia では可解な7次方程式のガロア群は C7,D7,F21,F42(位数はそれぞれ7,14,21,42)の4種類あるはずなのですが,私には見つけられませんでした.なお,F21,F42と書きましたが,Wiki ではメタ巡回群と呼んでいます.ここでは「Mathematicaで5次方程式の厳密解を求める」と繋がるような表現にしています.

[3]解き方は5次方程式と基本的には同じです.但し,最初に原始元とGalois群を(SageMathで)求めてから解いています.少し詳しく言うと,F42もD7 もC7を含むので,7次のLagrangeの分解式r1〜r6の7乗をR1〜R6とすると,R1+R2+R3+R4+R5+R6が「単純計算」で求まります.そしてR1,R2,R3,R4,R5,R6 を解に持つ方程式のガロア群はC6或いはその部分群となるので,3次方程式と2次方程式を組み合わせて解くことができます.すなわち,以下の2通りの方法で解けます.(もちろん,n次方程式の代わりに,n次のLagrangeの分解式を考えても解けます.)詳しくはF42_Solutions.nbをご覧ください.


[4]上の2つが「基本的な解法」ですが,さらに「Mathematicaで5次方程式の厳密解を求める」で参考文献[1][2]として挙げた「R1=l0+l1ζ+l2ζ2+・・・+l6ζ6 の係数l1〜l6を使う方法」も試しました.5次方程式の時と同様に「綺麗にかつ簡単に」解けるのですが,5次方程式の場合と異なり,他の2つの方法に比べて解が長くなるのが欠点です.詳しくは「Another_F42.nb」をご覧ください.

[5] 「Mathematica で可解で既約な7次方程式の厳密解を求めるプログラム」も書きました.しかしガロア群と原始元vによる解の表現は他のソフト(SageMath や Magma など)で求めないといけないので,「未完成」です.

[6]7次方程式には本質的な難しさも有ります.一つには「変数の多さからくる計算量の増大」と「結果の表示の膨大さ」です.5次方程式の場合は一瞬で計算が終わったのが,7次の場合は「コーヒーを飲んで休憩」できるぐらいの時間がかかることがあります.また結果は長い解だと5頁位に渡ることもあります.さらに「既存の公式がないことからなる大変さ」も有ります.[3][4]で述べた様に,「R1〜R6」或いは「l1〜l6」の6次方程式に帰着させても,6次方程式の解の公式はなく,少し工夫が必要になります.(5次方程式の場合は「R1〜R4」或いは「l1〜l4」の4次方程式を解くことに帰着され,4次方程式は解の公式が存在するので容易でした)最後に,2乗根,3乗根,7乗根で正しい根の選択をするのも,変数やステップが多くなり大変です.結局,不本意ながら,数値計算を利用して根を選択することにしました.(^^;)

[7]原稿は少しバージョンアップして(^_^) Mathematica14 で書きました.Mathematica をお持ちの方なら,notebookをダウンロードしてそのまま「ノートブックを評価」すれば,厳密解とそこに至るプロセスの両方が良く分かると思います.ただ計算が複雑なせいか,ノートブックの評価に20秒から,最大1分程の時間がかかります.ご注意下さい.

[8]Mathematica をお持ちでない方は PDF をご覧ください.また無料でnotebookを読める「Wolfram Player」というのも有ります.Windows,Mac,Linux,iOS に対応しています.「PDFの右端が切れて読めない」などの場合は,こちらをお使いください.


[9]ご感想,ご質問などは下のメールリンクからお願いします.それではお楽しみください.これで Mathematica , GeoGebra, Magma, SageMath など数学ソフトの愛好者が一人でも増えれば良いと思っています. (2025年 5月5日)


 Mathematica で 可解で既約な7次方程式を解く具体例
方程式 Galois群 PDF Notebook
1. x7-2x5+x4 +4x3-x2-4 x +3 F42 F42_Solutions.pdf F42_Solutions.nb
2. 同上 同上 Another_F42.pdf Another_F42.nb

 Mathematica で 可解で既約な7次方程式を解く「未完成」プログラム
PDF Notebook
solveSepticProgram.pdf solveSepticProgram.nb

可解で既約な7次方程式のリスト(係数の絶対値が10以下)
solvableSepticEquations.txt

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