PDFファイルの作成の苦労話

2002年4月21日記

TeX から,PDFファイルを作成するのは,本当に難しいことが今回よく解った。 私は普段 WinDviPro というちょっと一昔前の Dviドライバーを使っている。これは今最も使われている Dviout が画面表示で pkフォントを使っているので (PDFファイルのように) ぼけて見えるからである。それにたいし WinDviPro は, Word のように TrueType フォントを使っているので, 文字がにじむことがなく,私には見やすいからである。 しかし,コンピュータの世界では「多数派(メジャー) に属していないと痛い目にあう」ことをまたまた思い知らされた。 (もちろん,痛い目にあったのは今回だけではない。例えば, 私のプリンター(SharpJx3210) は小さいのが気に入って買ったのだが,あまり売れないせいかWindowsXPに対応せず,結局新しいプリンター を買う羽目に陥った。)


1. PDFファイルを最初作成したとき,私は最初 WinDVIPro から「印刷」を選んで作成していた。これでうまく行ったように見えたのだが ,実は他の人には【文字化け】していたらしい。それは,Windvi が使っている truetype Font のライセンスの関係で,Font がPDFファイルに埋め込めていなかった せいであることが(後で)解った。私としては Distiller で「フォントを埋め込み」 と指定しているので大丈夫と思っていたのだが,じつは, 特に指定しなければ,Distiller は勝手にフォントを変更して Pdfファイルを作ってしまうのだ。しかも 悪いことに defaultでは 「ローカルフォントを使ってPDFファイルを見る」 設定になっているので,自分のパソコンで見ているときには 文字化けには気づかないのである。「ローカルフォントを使用しない」設定に変え ると,しっかり私のパソコンでも文字化けしていることに気がついた。 ショックである。

2. 次に私は DVIOUT を使ってDVIファイルを作成し,DVIOUTから印刷 してPDFファイルを作ってみた。すると今度は文字化けはないのだが ファイルサイズが異様に大きい。元の10倍! にもなる。 いろいろ本を読んで調べると,TeXの標準のフォント(pkフォント -DVIOUTも標準ではこれを使う) はTrueTypeでないので, これをPDFファイルに直すとき,Distiller はビットマップ (Type3フォント)として埋め込んでいるらしい。道理でサイズが巨大になるわけである。

3.そこで私は Bakoma Font(フリーの TrueTypeフォントの一種) を入れて,「 WinDviPro にBakomaFontを使わせよう」 と考えた。\Windows\Fonts に入っている cmr, cmtt などを置き換えてみたのだが,WinDviPro は全く使ってくれない。ちょっと 時間がかかりそうなので,WinDviPro から印刷するのはあきらめることにする。 (とりあえずですが)

4.再び DVIOUTから作成することにし,掲示板(奥村TeX-FAQ)で情報を 集めることにする。このサイトは巨大なのは良いが,1万件以上もある情報から 必要なものをピックアップするというのは,私は実は 大嫌いなのだ。しかしこの際仕方がない。 ちょっとうろついてみると,trueTypeフォントとして txfont を使えばいいことがわかった。しかも DVIOUTは txfont も使えるらしい。しかし,いい加減疲れてきた私は インストーラーが付いている(はず)の「美文書作成入門(第2版)」(奥村晴彦著) \2980 を買うことにする。これで3冊目の「美文書作成入門」になるが インストールをやってくれるのは有難い。ところで Windvi と txfonts は干渉するので,txfonts+TeX system は WindowsMe の方にインストールすることにした。 (ちなみに 「私はなぜMuPADの解説を書いたか?」 を読んでくれると解るのだが,わたしのシステムは WindowsXP+WindowsMe のダブルブートである。) さてインストールが終わっていざ使おうとすると 「your NTFS system is not properly set」というエラーがでて使えない。 面食らって (というのもWindowsMeの方には,それまで TeXは全く入れていなかったので干渉するとは考えられないから) サポートページをみると,「すみません。CD ROMが壊れていました」 というメッセージを発見。一体何のために買ったのか? その上追い討ちを掛けるように,「第3版の【美文書作成入門】 が4月8日に出ました。今まで指摘のあったバグを除いてあります」 とのメッセージも発見しショックを受ける。わたしの買ったのは 4月12日であった。立川市にはまだ来てなかったのか。。。 泣く泣くWeBからダウンロードし txfontのシステムを 手動でインストールする。

5.「さあこれでいよいよPDFが作れる」と思ったがそうは甘くなかった。 DVIファイルは完璧だった。しかし, DVIOUTから印刷すると,確かにファイルサイズは前よりは小さいが, 思ったほどは小さくならない。しかもフォントは汚く, フォントタイプを調べると ,そこには「Type3」の文字が。。。そのうえ,埋め込んだBMPファイルも 白黒になってしまっている。再び奥村先生のホームページを見ると 「txフォントを利用して,DVIOUTから印刷すればよい」となっている。 その通りやっているつもりなのだが,なぜ?

6.今度は 掲示板の方の書き込みを調べると,「Dvipsk で psファイルを作り,それをDistillerで変換するとよい」 と書いてある。早速 dvipsk をかけると,今度はきれいに文字が出た。 PDFのフォントを見ると「Type1」になっている。やったー。 しかし,今度は画像が出ていない。epsファイルでないと dvips は埋め込めないらしい。【美文書作成入門】 にしたがってWindows標準のプリンターで,BMPファイルを EPSファイルにするが, なぜかうまく表示してくれない。 またまた掲示板で調べると,EPSファイルの変換は うまく行かないことが良くあるらしい。eps-conv というフリーのソフトがいいとも書いてある。

7.結局,EPS-CONVを使って, BMPファイルを全てEPSファイルに変え, これを txfonts+DVIOUT で埋め込んでDVIファイルを作成し, それを dvipsk を使ってPSファイルに変換し,最後に そのPSファイルを Distiller でPDFファイルに変換すればいいことが解った。 「そんなの知らなかったの?」という声が聞こえてきそうだが, わたしは, WEBをサーチするのは苦手なのです。どっかの本に書いてあるか, 少なくとも一箇所にまとめて書いてあればいいのだが, 膨大なFAQの集まりから情報を見つけるのは,本当に苦手だ。 何よりも落ち着かない。自慢じゃないが 携帯電話も持っていない。情報の海で泳ぐのには ちょっと向いていない。 WeBサーフィンは, 一年に2,3回ぐらいだ。(でも,最近水泳は習い始めたが。。。)

8. さて,最初の「多数派(メジャー) に属していないと痛い目にあう」 に戻るのだが,これだけ私が苦労して作ったPDFファイルなのであるが,ある日,私の勤めている学校で,同僚に,彼の作ったPDFファイルを見せてもらった。それはファイルサイズも小さく, 綺麗だった。念のためフォントタイプを調べてみると ちゃんと Type1 になっている。「どうやって作ったの?」と聞いたら,なんと「TeX for Windows Another Manuual」(最新版) についている TeXMaC で 「ワンクリックでつくった」というのだ。そんなのあり??という感じである。全くいままでの苦労は何のためだったのだ? そんなの禁じ手だと思いません? ま,何れにせよ頭にきたので,意地で いまでも WinDVI を使っている。人間,楽をしちゃいかんよ。ハハハ......ハハ。(注;TeXMaCの方は Bakoma font を使っているそうです.)

追記;しかし、この話はここで終わらない。私は最近WINDOWXPを再インストールした機会に最新版のTeXMacをインストールしてみた。そこから「PSファイルを作る」 を使ってpsファイルをつくって、それをdistillerで変換し、pdfを作ってみたのだが 、余りきれいではなかった。すべてがType1になっているわけでもない。いやはや、本当にPDFファイルは作りづらい。早くDVIファイルで配布できる日が来て欲しい。



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